このページでは、「ハステロイ」というニッケル合金の一種について、その特徴や加工上の注意点などを説明しています。板金加工業者や金属加工業者を選ぶ際の参考にしてください。
ハステロイは、主にニッケル、クロム、モリブデンなどの金属を添加して作られるニッケル合金の一種で、米国ヘインズ社が商標登録している製品名でもあります。ハステロイは、添加される金属の種類や成分量によって、ハステロイB、ハステロイC、ハステロイXなどの系列に分けられます。
ハステロイは、耐酸化性に優れ、高温下でも腐食しにくい性質を持っています。また、高温下で使用される製品や部品の材料としても適しています。ただし、物理的強度や金属疲労に対する抵抗力、クリープ強度などについては特に優れているわけではありません。そのため、高圧下や強い力がかかる環境での使用には適していないことがあります。また、ハステロイの特性は、添加物によって異なることがあります。
ハステロイは、素材として高価であることがデメリットの一つです。一般的なステンレスと比較して数倍の価格になることがあり、コスト面での負担が大きくなります。加えて、ハステロイは難削材としても知られており、金属加工を行いにくいことがあります。そのため、適切な加工会社を選定することが必須です。
ハステロイには、ハステロイB、ハステロイC、ハステロイXなどの系列があります。
ハステロイBは、約30%のモリブデンと約5%の鉄を含むニッケル合金であり、耐酸化性に非常に優れています。強い酸である塩酸、硫酸、フッ酸などにも強い耐性を示し、化学薬品工場や硫酸製造設備などの環境や、常に海水にさらされる場所でも使用されることがあります。さらに、高温下でも耐食性が低下しにくいのも特徴の一つです。
ハステロイCは、クロムを約20%、モリブデンを約15%、そして鉄を約50%含んだニッケル合金です。ハステロイBと同様、耐酸化性が高く、塩酸や硫酸、フッ酸などの強酸にも抵抗性を示します。ただし、ハステロイBよりも高温下での耐食性が優れており、900℃まで使用することができます。そのため、石油化学プラントや石油精製工場などで高温高圧の環境下でも使用されます。また、ハステロイBよりも強度が高く、高強度な部品や構造物に使用されることもあります。
ハステロイXは、クロムを約22%、モリブデンを約9%、ニッケルを約47%含むニッケル合金であり、耐食性が非常に高いことが特徴です。高温環境での強度を維持することができ、熱衝撃にも強く、非常に優れた耐食性を有しています。また、酸化や腐食にも強く、耐食性に優れた他の材料と比較して、より高温環境での使用が可能です。そのため、航空宇宙産業や原子力産業、石油・ガス産業など、極端な環境下で使用される部品に使用されることが多いです。
ハステロイは耐熱性や耐酸化性に優れた素材ですが、その特性から加工が難しい材料でもあります。以下に、ハステロイを加工する際に注意すべきポイントをいくつか挙げてみます。
ハステロイの切削時には、適切な工具選定と加工条件設定が必要です。切削速度が遅く、切削量が少ない場合には、加工時間が長くなりすぎてコストが膨らんでしまうため、切削条件を適切に設定する必要があります。
ハステロイは熱伝導率が低いため、加工時に発生する熱は部品内部に蓄積されます。そのため、部品形状が複雑であったり、厚みがある場合には、加工前に材料の熱処理を行うことが必要となります。
ハステロイは切削加工中に加工硬化が生じやすいため、切削工具の刃先がすぐに摩耗してしまうことがあります。そのため、適切な冷却剤や加工オイルを使用することで、加工硬化を防ぐ必要があります。
ハステロイは加工が難しい材料の1つであり、仕上げ加工には時間がかかることがあります。特に、表面粗さが重要な場合には、仕上げ加工に時間をかけて正確な表面粗さを実現する必要があります。